一括対応の”ウチキリ”とは!?

交通事故

 皆さんは、交通事故で負ったケガを治療するためにかかる費用のすべてを加害者側の保険会社が支払ってくれるものだと思ってはいませんか?
 それは、勘違いです!!
 事故から一定期間がたつと、保険会社から「一括対応を打ち切ります。」という連絡がはいります。このとき、「一括対応のウチキリってなに!?」「もう治療をうけられないの?」などと慌てずにすむよう、”一括対応のウチキリ”についてきちんと理解しておきましょう。

 この記事では、一括対応のウチキリの意味などについて、説明していきます
※「一括対応」の意味について知りたい方は、一括対応のメリット・デメリットをご参照ください。

一括対応の”ウチキリ”とは?

 一括対応とは、加害者の加入する任意保険会社が、自賠責保険の対応も一括して行うサービスのことをいいます。交通事故の被害にあわれた方が病院へ通うとき、加害者の保険会社が治療費を病院へ直接支払ってくれるのも、この「一括対応」の一環です。

そして、 一括対応の“ウチキリ”とは、その言葉のイメージどおり、一括対応を終了することを意味しています。

 それでは、一括対応が打ち切られることで、皆さんは、どのような影響をうけるのでしょうか。
結論からいえば、一括対応を打ち切られると、任意保険会社が治療費を支払ってくれなくなります。つまり、皆さんが、一括対応を打ち切られた後も治療したい場合には、とりあえず、自腹で通院しなければならないことになります。
 事故の影響で痛みがあっても、経済的な余裕がないなどの理由から、自腹での治療を断念せざるを得ないという方もたくさんいらっしゃることでしょう

 このように、一括対応の“ウチキリ”をされるかどうかは、皆さんが事故でおったケガの治療を続けられるかどうかにも大きく影響しているのです

一括対応”ウチキリ”の時期と判断のポイント

 では、保険会社は、いつ、どのような判断にもとづいて、一括対応を打ち切っているのでしょうか。
※私が、加害者側の保険会社の担当者としたやりとりから推測される内容も含みます。

 まず、保険会社は、患者の症状が“コテイ”したと判断できる場合に、一括対応を打ち切っているようです。 ここでいう症状の“コテイ”とは、首や腰の痛み、手足のしびれといった事故に起因する症状が、それ以上治療しても良くならない状態のことをいいます。つまり、何らかの症状は残っているけど、治療したところで改善しない症状なのであれば、治療をつづける必要はないだろうということです。

 そして、症状固定となったかどうか(すなわち、一括対応を打ち切るかどうか)の判断は、事故の発生状況や診断書に記載された傷病の内容、通院の頻度などを総合的に考慮してなされています。

 これだけ聞くと、まぁそんなものかと思われるかもしれません。

ですが!!
ここでは、
 ① 症状固定と判断するのは誰か?
 ② 症状固定の判断の根拠は?
という点に注意しなくてはいけません。

 本来であれば、症状固定とは医学的な判断ですから、その判断は、患者の担当医によってなされるべきです。これは、医学の専門知識を有しており、患者の症状を定期的に診察しているのが担当医なのですから、言うまでもありません。

 しかしながら、保険会社は、患者の担当医の見解を問うことなく、事故の状況や物損額、診断書に記載された傷病名などから、類型的に症状固定時期を判断することもあります。

 もちろん、保険会社には医療部門があり、医学的な知識をもちあわせた専門家が診断書等の記載から患者の症状が固定時期にいたったと合理的に判断するケースも多々あります。
ですが、このような適切もされないまま、事故状況や事故直後の症状などから類型的に判断されてしまうケースもあるのです。皆さんは、類型的な対応をされてしまわぬよう、注意しなければなりません。

 弁護士にご依頼いただいた後で、一括対応ウチキリの連絡がある場合には、保険会社に対して、「担当医の見解を聞いてから判断しましょう。」(これを医療照会といいます。)と提案することになります。

 このような対応をすることで、一括対応の時期を遅らせてくれるケースもありますが、保険会社内での決定事項だとして打ち切られてしまうことも多々あります。
 これは、一括対応が保険会社のサービスであるが故の帰結であり、たいへん歯がゆい思いもありますが、我々弁護士の力の限界でもあるように思います。

一括対応の”ウチキリ”後の治療はできない!?

 ここまで読んでくださった方には、一括対応のウチキリの意味やタイミングについてご理解いただけたと思います。
 この項でお伝えしたいことは、「一括対応のウチキリは、治療継続を禁止するものではない」ということです。

 事故に遭われた方の中には、保険会社から一括対応を打ち切られたので3か月しか通院できなかったとあとになって相談される方がおられます。
 ご自身の経済的な理由によるものであれば仕方ないのかもしれませんが、一括対応のウチキリが治療の強制終了だと勘違いされているケースも散見されます。
 一括対応のウチキリによって、保険会社が病院に治療費を直接支払ってくれなくなるというだけで、治療そのものを否定するものではありませんので、十分に注意してください
 一括対応の打ち切り後に自費で通院した分の医療費は、残存する症状が後遺障害等級に該当すると自賠責保険で認定された場合には、保険会社から回収することができます。
 後遺障害等級の該当性の判断などについては、別の記事で取り上げたいとおもいます。

まとめ

□一括対応を打ち切られても治療を続けることはできる!

□一括対応の打ち切りにより、保険会社が治療費を病院などへ直接支払ってくれなくなるので、打ち切り後の治療は自費となる。
 ただし、残存する症状が後遺障害等級に該当すると認定された場合には、自費通院分も保険会社から回収できるのが一般的。

□保険会社の独断で一括対応を打ち切られてしまうこともあるので、早め早めの相談を!