突然ですが、「人身傷害保険(または人身傷害補償保険)」という保険をご存じですか?
交通事故の被害にあったとき、通常は、加害者側の保険会社から保険金が支払われることとなります。
この“加害者側の保険会社”には、強制加入の「自賠責保険」、任意加入の「対人賠償保険」があり、一般的には“対人賠償保険”から保険金が支払われます。(関連記事:保険金を支払うのは誰!?)
これらの加害者側の自動車保険とは別に、被害者側の保険として「人身傷害保険」があります。
この記事では、被害者側の保険である人身傷害保険について、その特徴やメリットなどを詳しく説明していきます。
事故の不利益をゼロにできるよう、人身傷害保険に関する知識をしっかりとみにつけておきましょう!
人身傷害保険とは?
この項では、人身傷害保険の特徴について説明します。
対人賠償保険の仕組み・特徴
被害者側の保険である“人身傷害保険”の特徴を理解しやすくするため、まずは、加害者側の保険である“対人賠償保険”の仕組みを簡単に説明します。
対人賠償保険とは、人身事故の加害者が任意に加入する自動車保険で、被害者が被った損害はこの対人賠償保険から支払われるのが一般的です。
この保険の特徴として抑えておきたいのは、人身事故の加害者(保険の被保険者)が被害者に対して損害賠償責任を負う場合に、その責任の範囲で保険金を支払うという点です。
下の図を見てください。
この図からイメージできるとおり、対人賠償保険は、人身事故の加害者が被害者に対して損害賠償責任を負うことを前提として保険金が支払われ、るという仕組みになっているのです。
ここでのポイントは、「対人賠償保険では、人身事故の加害者が被害者に対して損害賠償責任を負うことが保険金支払いの前提になっている」という点です。
人身傷害保険の仕組み
対人賠償保険の仕組みについてわかったところで、今度は人身傷害保険についてみてみましょう。
下の図をご覧ください。
図からも分かるとおり、人身傷害保険では、人身事故の加害者が被害者に対して負う責任については全く考慮されません。
つまり、加害者の賠償責任とは関係なく、被害者に発生した損害について保険金が支払われる仕組みとなっています。
これは、人身傷害保険という保険商品が作られた経緯をみればご理解いただけます。
もともと人身傷害保険が存在しなかったころ、加害者が支払の責任を負う金額が確定するまで、被害者は対人賠償保険から保険金を受けとることができませんでした。
今でこそ治療費や休業損害といった実損(損害額が毎月確定する費目)については支払いを受けられるのが一般的ですが、十分な休業損害が支払われなかったり、通院費用などを立て替えて支出しなければならなかったりと、被害者の経済的負担が大きくなってしまっていました。
そこで、加害者が支払の責任を負う金額が確定する前に、被害者に保険金を直接支払うことで救済を図ろうと、人身傷害保険がつくられたのです。
というわけで、
人身傷害保険は、加害者の賠償責任に関係なく、人身事故の被害者に対して保険金が支払われるという点に特徴がある!
ぜひ覚えておいてください!
人身傷害保険のメリット
ここまでで、人身傷害保険の特徴をご理解いただけたのではないかと思います。
この項では、この特徴を踏まえ、人身傷害保険のメリットなどについて説明したいと思います。
メリット1:保険金が早期に受け取れる
先に説明したとおり、対人賠償保険は、人身事故の加害者が被害者に対して損害賠償責任を負う場合に保険金が支払われる仕組みとなっています。
そのため、保険会社が保険金を支払うためには、その前提として、加害者が被害者に賠償義務を負う損害額を計算する必要があります。
損害額は、まず対人賠償保険の内部基準に基づいて計算されることとなりますが、その相当性などに疑義がある場合には、保険会社と話し合いをしなければなりません。
このようなケースでは、対人賠償保険との話し合いを終えた時点で初めて賠償額が決定するため、保険金が支払われるまでに相当な期間を要してしまうのです。
これに対し、人身傷害保険では、保険約款で予め定められた基準にしたがって保険金額が算定されます。
“加害者が被害者に対して賠償責任を負う金額”が算出されるのではなく、保険約款の計算方法にしたがって支払われるべき保険金額が計算されるため、その相当性などが問題になることは通常考えられません。
そのため、保険会社との話し合いなども必要なく、対人賠償保険の場合よりも早く、保険金を受け取ることができるのです。
このように、加害者の賠償責任の範囲が保険金支払いに影響するか否かという“対人賠償保険”と“人身傷害保険”の特徴の違いは、保険金の支払われる時期に影響することとなります。
メリット2:被害者の過失部分についても保険金が支払われる
人身傷害保険では「加害者の賠償責任に関係なく保険金が支払われる」ため、被害者の過失割合に応じた損害部分についても保険金が支払われるということになります。
どういうことなのか、具体的にみていきましょう。
まずは、“過失割合”について簡単に説明します。
“交通事故”と一言でいっても、停車中に後方からぶつけられる“追突事故”や交差点での “出合い頭事故”など、その発生状況は様々です。
追突事故の場合(ここでは、赤信号に従って停車していた車両に追突した事案を想定しています)、被害車両の運転手が、後方の車に衝突されることを見越して、予め横に避けておく、、、なんてことは不可能ですから、被害者の過失はゼロとなります。
他方、出合い頭事故では、(もちろん発生状況にもよりますが)「交差する道路から車が直進してくるかもしれない」とか「車が飛び出してきたときに備えて速度をおとして走ろう」などと、交通事故の発生を予見して何らかの予防措置をとることも可能です。
このような状況で交通事故が起こってしまった場合には、どちらか一方のみが悪いとはいえず、当事者Aの落ち度20%、当事者Bの落ち度80%などと、当事者の双方に落ち度があったと評価されることとなります。
このように、交通事故発生の責任が、どちらの当事者にどれくらいあるか?を表した数値を“過失割合”といいます。
それでは、本題に戻ります。
被害者の過失割合がゼロという場合には、被害者に発生した損害全額に相当する保険金が、対人賠償保険から支払われることになります。
ですが、被害者にも一定の過失があるという場合には、損害全額分の保険金を対人賠償保険へ請求することができません!
被害者に発生した損害のうち、自身の過失割合を控除した金額が保険会社から支払われることになります。
これは、被害者自身の落ち度により発生した損害についてまで、加害者に賠償責任を負わせることは不公平といえるためです。
このように、事故の被害者にも過失があるとされる場合には、被害者が受けた損害全額の補償を受けられないこととなってしまうのです。
これは、“人身事故の加害者が被害者に対して負う責任の範囲で保険金を支払う”という対人賠償保険の仕組みにもとづくものです。
ですが、どうでしょう?
たとえ被害者にも落ち度があるとはいえ、事故発生の原因が主に加害者側にあるのですから、損害額のすべてを保険金で補ってもらいたいと思うのではないでしょうか?
そこで登場するのが、人身傷害保険です!
人身傷害保険では、加害者の賠償責任に関係なく保険金が支払われるため、加害者が賠償責任を負わない“被害者の過失部分”の損害についても保険金が支払われるのです。
※ただし、要注意です!!
どのようなケースでも、被害者の過失部分の損害が人身傷害保険で補われるわけではありません!
人身傷害保険から、被害者の過失部分に相当する損害について保険金が支払われるケースは、限定されています!
この点を理解しておかなければ、てっきり支払われると思っていた保険金が支払われないという事態になってしまいますので、注意してください。
この点は別の記事で詳しく解説したいと思いますので、本記事と併せてご覧ください。
まとめ
ここまでの内容を簡単にまとめましょう!